誰にでも訪れる、大切な誰かを失う経験。それは、ある日突然やってくるかもしれないし、心の準備をする時間があるかもしれない。でも、どんな状況であれ、心にポッカリと穴が空いてしまうのはみんな同じ。
何気ない朝の風景からはじまるサシャとロレンスの日常。ロレンスがまだベッドで眠る中、サシャはいつもどおり、コーヒーを飲んでシャワーを浴びて、仕事に向かう。そんな緩やかで穏やかなシーンが愛おしく思えるほど温かい気持ちに包まれるとても素敵なストーリーでした。
ある日突然逝ってしまったサシャ。サシャとロレンスのふたりが暮らすベルリンへフランスからやってきたサシャの両親と妹ゾエ。そして、サシャの恋人ロレンスも、その現実に向き合えず、ただただその気持ちのやり場を探し続けます。
1年後、フランスでゾエと再会したロレンスは、「助けてほしい、どうやって哀しみを乗り越えたらいいのかわからない」「君はどうやって乗り越えるの?』と口にします。対するゾエの返事は「わからない」。
大切な人を失った心の哀しみや戸惑いの乗り越え方は、それぞれ。でも少しずつ、こうやって故人を思いながら誰しもが、ゆっくりと時間をかけてその哀しみを癒していく時の流れが丁寧に描かれています。
ベルリン、ゾエが暮らすフランス、そして、ニューヨークで… ゾエとロレンスは、それぞれサシャへの想いを心に留めながら、時と場所を超えて、ゆっくりとその喪失感を癒していきます。その緩やかな時の流れとスクリーンに映る映像、ロレンスやゾエ、そしてサシャの家族の心のうちはいつまでも心に残ります。
愛する人、大切な人を失うことはもちろん辛く哀しいこと。
それでも愛する人は、逝ってしまった後ですら、こんなにも温かくやらかい愛をくれる…しばらくこの余韻に浸っていたい、そんな気持ちに満たされた作品です。愛する人を想うために、常に側に置いておきたい・・愛に溢れた温かい作品です。
目覚めるとき、眠るとき、笑うとき、海を眺めるとき、君を思い出す。愛する人の死からはじまる、静かに、心打つ。愛と再生の物語。
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